ジャパンキャビアの挑戦|宮崎発の“黒い宝石”が変える食卓【Interview】

日本のキャビアづくりの未来を
切り開いたパイオニアが語る
“本当に美味しいキャビア”へのこだわり
あなたは「本当に美味しいキャビア」を食べたことがありますか?
キャビアといえば、世界三大珍味の一つに数えられる高級食材。
日本で作れる家庭料理の中でキャビアを活用する方法を発信している企業・人はあまりおらず、まだまだ私たちにとって縁遠い存在なのかもしれません。
しかし今から10数年前、そんな日本で“キャビアのイメージを変えたい”と、立ち上がった企業があります。
今回インタビューに答えてくれたのは、今や日本で一番有名になった純日本産キャビアのメーカー『ジャパンキャビア』を作り出した坂元基雄社長。
数々の苦難を乗り越えて彼らが作り出した、日本人が本当に美味しいと思えるキャビアを、いつどこにいても、誰でも楽しめる環境。
インタビューを通して、坂元さんが伝えたかった「お客様への思い」も見えてきました。
日本で初めての“国内産キャビアメーカー”の歴史
ジャパンキャビアが生まれたのは、2013年のこと。それまで、日本で食することができるキャビアのほとんどは海外から輸入されたもので、2013年にジャパンキャビアが生まれるまで、日本には国内産のキャビア生産業者はいませんでした。「ジャパンキャビアが生まれるまでの歴史は日本のチョウザメ養殖の歴史でもあります」、と坂元さん。まずは、ジャパンキャビアが生まれるまでのストーリーと、現在をお伺いしていきます。
日本で例のなかったチョウザメの国内養殖に果敢にチャレンジ
「旧ソ連から友好の証しとして200匹のチョウザメが日本政府に寄贈されたのは、1983年のこと。
宮崎県水産試験場で研究が始まり、2004年頃から民間事業者による養殖が許可されました。
そこから9年あまり経ち、養殖したチョウザメからキャビアを取り出すことができたのが2013年でした。
いくつかの養殖業者が集まって、宮崎キャビア事業共同組合という団体を立ち上げ、そのリーダーとなったのが私です」
絶滅危惧種でもあるチョウザメの野生個体群は、生息数が減少の一途をたどっています。
チョウザメは全て、ワシントン条約の保護種の対象であり、天然キャビアの国際取引ができない今、日本人が天然キャビアを国内で生産するには、日本でチョウザメの養殖を行い、頭数を増やしていくほかありませんでした。
「チョウザメのメスは早いものでも6〜7年ほどの養育期間を経てからでないと、卵を持ちません。
2013年にキャビアを取り出すことができるまでは、養殖の成功が全く保証されない中、チョウザメの育成維持に多大なコストをかけ続けました。
中には養殖中に命途絶えてしまうチョウザメもおり、100体いたとしても、10年後に卵を持つメスのチョウザメは40匹もいないのです」
野生のチョウザメが絶滅の危機に晒されている今、日本だけでなく、どの国の生産者も似たような状況の中、チョウザメ養殖を行っています。
だからこそ、キャビアの価値は今もなお高騰し続けているのです。
数々の高級店から声がかかるキャビアメーカーへ
坂元さんと宮崎キャビア事業共同組合は、まだ日本でも実績がほとんどなかったチョウザメの養殖に手を尽くします。
こうして2013年に、日本で初めての国産キャビアメーカー「ジャパンキャビア」が誕生しました。
「世界の中では日本のキャビア作りの歴史はまだ浅いですが、私たちは独自のキャビアづくりで、日本人ならではの要素をふんだんに取り入れたキャビア作りを達成しました」
ジャパンキャビアを一口食べてみると、その味わいは今までに食べたキャビアとは全く違う繊細な味わい、そしてフレッシュな風味を感じることができます。
「実はヨーロッパ産のキャビアも、現地で食べると輸出品とは全く違う味なんです。
輸出用のキャビアは塩分濃度が濃く、そして長い船旅の中でフレッシュさも失われてしまっています。
どこの国でも国産のキャビアと輸出のキャビアでは味わいに数ランクの差がありますが、日本でもフレッシュキャビアが味わえるようになったということで、国内の名だたるシェフやレストラン、高級ホテルにご贔屓にしてもらえるようになりました」
今やジャパンキャビアは国内外の有名シェフからも支持を集めており、パークハイアットやフォーシーズンズといった高級ホテルのレストランで取り扱われている他、ANAやJALの国際線ファーストクラスの機内食にも選ばれています。
この10年の間で養殖方法も安定し、2013年には年間15キロだった生産量も、2015年には200キロ、現在は1トン以上の生産数をキープ。コロナ禍となった2020年には商品のEC流通をスタートし、その危機を乗り越えて成長し続けています。
ゼロから試行錯誤。他にないキャビアづくりへのこだわり
世界のキャビアメーカーでも、その製法は企業秘密となっているところが多く、坂元さんとジャパンキャビアもどこかを参考にすることもなく、イチからキャビアづくりにトライすることになりました。
しかしその結果、世界でも類をみない「日本らしいキャビア」を誕生させることができたのです。
低塩分にこだわり、2000回の失敗を乗り越えて
「独自の熟成方法」を確立
今や国内外のセレブにも愛されているジャパンキャビア。しかしキャビアづくりをスタートした当時、国外のシェフには味を酷評されたこともありました。
「初期はキャビアを取り扱う様々な有名シェフに味見をしてもらったのですが、何度も“美味しくない”と言われました。
本物のキャビアにはもっと味に深みがあるのだと。
海外産のキャビアはワインやチーズのように熟成工程があるものも多いと知り、私たちもキャビアの熟成に挑戦することになりました」
温度や湿度、保存環境など、2000回以上のトライアンドエラーを繰り返し、独自の正解を探っていったジャパンキャビア。
何度も失敗を重ねても、フレッシュな味わいを保つ「低塩分」にこだわり続けました。
「塩分濃度を上げてしまえば簡単ですが、とにかく美味しさにこだわりたかった。
長い熟成期間を経ても、低塩分のまま美味しいキャビアを作る方法を模索しました。
工夫をこらした無菌室でキャビアを取り扱うことで、1年経っても菌が検出されないキャビアを作ることに成功しました」
熟成してもフレッシュ、相反する要素を織り交ぜるための工夫
低塩分で熟成することで、フレッシュさと深いコクを両立する唯一無二のキャビアを誕生させた坂元さん。
日本人を唸らせ、そして世界にも通用する本当に美味しいキャビアづくりのために、熟成以外にも全ての工程にこだわりました。
「養殖と工場生産、熟成は全て宮崎県内で完結させることで、新鮮なキャビアを安全に取り扱えるよう工夫しています。
宮崎の水産試験場のマニュアルに沿った養殖で品質の高い原料をつくり、氷水の中で工場に運び出すことで、雑味となる血をちょうどよく抜きます。
さらに、工場では人の手で、ピンセットを使いながらキャビア一粒一粒の不純物を取り除きます」
海外産のキャビアでは、不純物も一種の「深み」として生かされることが多いそうですが、それが独特の臭みに繋がる場合もあります。
卵膜や血管などの不純物を、幾度もの工程を経てしっかり取り除くことで「熟成しているのにフレッシュ」という、相反する味わいを閉じ込めることに成功したのです。
「製造工程も可能な限りHPに明記して、お客様に安心感を持って商品を手に取ってもらえるよう工夫しています」
ジャパンキャビアだからこそ楽しめる、
おすすめアレンジ商品3選
日本では長い間、キャビアは「高級料理店で飾られるもの」でもありました。
キャビアそのものの美味しさを味わうというよりも、その高級感を味わうものであり、キャビアだけを食べて「美味しい」と感じることは、日本では難しかったのです。
しかし、ジャパンキャビアは日本におけるキャビアの概念を180度変えてしまいました。
そのまま食べてもお酒に合わせても、料理と合わせても美味しいジャパンキャビアならではの魅力についてもお伺いしました。
食材に溶け込む
「宮崎キャビア1983」
ジャパンキャビアの定番であり、ブランドの象徴でもある「宮崎キャビア1983」。
チョウザメが日本に寄贈された年でもある「1983」が商品名に掲げられています。
防腐剤や保存料を使用せず、岩塩のみで味付けして60日以上の長期熟成を行うことで、キャビア本来の深い旨味が引き出されています。
「岩塩のみの味付けとは思えない、というお声をいただくことも多いです。
低塩分なのでそのまま食べても美味しく、スプーンで大盛りに掬って味わっていただきたいです。
お酒のアテとしてそのまま楽しむのもいいですが、自宅で簡単に作れるおつまみに添えていただくのもおすすめです。クセがないのでアレンジしやすく、海鮮やパン、卵など、様々な食材に馴染んでくれます」
「宮崎キャビア1983」はこちら>
和食と楽しむ
「宮崎キャビア1983 バエリ旨味」
貴重なシベリアチョウザメの卵を原料とする「バエリ」は旨味が強く、まだキャビアを楽しんだことがないという人でも美味しく食べることができるおすすめの逸品です。
「こちらは味付けに厳選した醤油や昆布を使用しており、和のテイストを纏ったキャビアとして人気です。
高級店ではお寿司の上に使われていたりもしますが、日本の家庭料理にも馴染んでくれます。
意外かもしれませんが、私のおすすめはふかしたじゃがいもの上に、バターと一緒にバエリ旨味をかけていただくこと。
B級グルメが一気に本格的な味わいになるので、普段あまり料理をしないという人でも使いやすいはずです」
「宮崎キャビア1983 バエリ旨味」はこちら>
本場の食べ合わせを日本ならではの感性で楽しむ
「宮崎キャビア1983 &ブリニ セット」
ロシア発祥のブリニは、小麦粉や蕎麦粉、卵、牛乳などを原料として作られる小さなパンケーキです。
甘くないので、本場でも上にトッピングをし、オードブルやスイーツとして食べられています。
そんなブリニをこだわりの原料を使って、日本風にアレンジしたものと「宮崎キャビア1983」がセットになった、ギフトにおすすめの商品です。
「宮崎県産の日向夏やほうれん草を使った、味わいの異なるブリニを4種類開発しました。
ブリニの上にキャビアを載せれば、簡単に本場流の食べ方を楽しめます。
専用のシェルスプーンは金型から独自に開発し、宮崎キャビア1983の瓶のサイズに合わせ、最も掬いやすくかつ美しく見えるよう工夫しました」
「宮崎キャビア1983 &ブリニ セット」はこちら>
手元に届いた時の感動、
安心を倍増させるパッケージの工夫
シェルスプーンに限らず、キャビアを保存するパッケージの瓶も、こだわりを持って独自開発。
蓋を開けた時の感動感を増幅させるため、平たい形状のものを採用しています。
「キャビアを瓶詰めする時は人の手で、表面はピンセットで1粒ずつ仕上げていきます。
キャビアにはよく見ると白い目玉があり、そこが見えてしまうとキャビアの“黒い宝石”らしさが損なわれるからなんです」
また、瓶の底にはシリアルナンバーが記されており、番号を入れるだけでその商品の製造工程や時期を全て確かめることもできます。
原料が採取された養殖場や工場に運ばれた日付など、全ての工程をトレーサビリティで確認できます。
何かあった時に、確実に問題を特定できるようになっています」
商品を手に取った後のお客様の気持ちを第一に考えたものづくりに、日本企業ならではの誇りが詰まっています。
養殖から製造、パッケージ、ブランドづくりに至るまで、全てにこだわったからこそ、自らのブランドを“クラフトキャビアブランド”と名付けました。
ジャパンキャビアのキャビアづくりは、私たちにしかできない。そんな誇りとクラフトマンシップを込めて、そう名付けました」
日本人にとってのキャビアが、さらに身近で美味しい食材になるように
ジャパンキャビアの登場で、私たち日本人は今までなかった「美味しいキャビア」を、いつでも国内で食べられるようになりました。
キャビアは高級食材ですが、ECサイトで販売を開始した際、これほど多くの方が個人的にキャビアを購入してくださるとは思いませんでした。
そういう方が増えるほど、キャビアの存在は日本人にとっても身近になっていくのでしょうし、飾るキャビアではなく“食すキャビア”を、より多くの人に楽しんでいただけることを嬉しく思います。
宮崎キャビアを手に取ってくださる全ての方に美味しさと安心感をお届けするために、これからも誠意を持って、日本のキャビアづくりを先進していきます。
キャビアを食べたことがない人にこそ、宮崎キャビアを手に取っていただきたいです。
本当に美味しいキャビアを口に含んだ時の、その体験をお届けすることが、私たちの仕事です」