【ブランドインタビュー】高級文具メーカー「アウロラ」
Made in Italy にかける誇り
今、若い人を中心に再び注目を集めている筆記用具。デジタルでなんでも完結する時代だからこそ、アナログな手書き文字に愛着を感じるものです。
中でも万年筆は、昔から大切な人への贈り物としても定番のアイテム。使うごとに手に馴染んでいき、その書き心地は自分だけのものになっていきます。
老舗メーカー「アウロラ」は、1919年にイタリアで初めて万年筆を取り扱いました。
1世紀を経ても変わらないものづくりへのこだわりや、今も色褪せない筆記具としての万年筆の魅力を教えてくれたのは、“AURORA JAPAN”として日本にアウロラの万年筆を広めた総合代理店・株式会社町山の後藤さんです。
アウロラの歴史
イタリア・トリノ伝統の文房具メーカー
アウロラが製造された1919年代、まだ万年筆は世界でも珍しい文房具だったのだそう。
ヨーロッパでいくつかの文房具メーカーは生まれていたものの、当時の主流は羽根ペンなどによる「つけペン」。
そんな中で生まれたアウロラは、すぐにイタリアを代表するメーカーの一つになっていきました。
製造は細かなパーツまで全て
「メイドインイタリア」
まずは、アウロラの営業を30年以上担当されている後藤さんに、アウロラの誇り、ブランドストーリーについて聞いてみました。
「アウロラが創業当時からずっとこだわっているのが“純イタリア製造”です。
特注の素材を自分たちで開発しながら、金属の細工師は自社で雇い入れ、自社では作れない細かなパーツ作成も、全てイタリア企業に外注。
アウロラの誇り高さはトリノでも有名で、街を歩けば必ずアウロラで働く人と出会う、というほど多くの雇用を地元で生み出しているんです」
アウロラは創業者一族によって継がれ続けているそうですが、ファミリーだけでなく、従業員をとても大切にする企業でもあるのだそう。
従業員たちもアウロラファミリーを慕っており、アウロラ工場は街のちょっとした観光スポットにもなっています。
高級ラインはオートメーション化せず
「職人が手作業」
「アウロラがここまで地元に愛されているのは、アウロラの産業が今も“手作りの温かみ”を残しているからこそ。
比較的リーズナブルなコレクションはオートメーション化されていますが、高級ラインは製造過程の多くで人の手を介します。
特にアウロラがこだわってきたのは、ペン先の金属細工。
当時、この独創的なデザインは多くの筆記具や万年筆に影響を与えましたが、アウロラは今も当時と変わらないデザイン性を守り続けています」
アウロラは、筆記具として初めてニューヨーク近代美術館によって永久展示保存されたという歴史も。
ペン先からボディに至るまで、その全てを自社工場で生産するアウロラの歴史は、イタリアのペンの歴史といっても過言ではありません。
機能性とデザイン性を兼ね備える、
アウロラ独自のこだわり
アウロラの万年筆には、その長い歴史の中でこだわり抜かれた様々な想いが詰め込まれています。
しかし、その魅力を一言でまとめるとすれば「使いやすさとデザイン性のバランス感の良さ」なのだと語る後藤さん。
ボディの樹脂やジュエリークリップなど細部にも
「アウロラらしさ」を
アウロラの万年筆といえば、この吸い込まれそうに鮮やかな、ジュエリーのような樹脂も特徴。
ペンのボディに使われている樹脂は『アウロロイド』という、アウロラが開発した特製の樹脂。
「樹脂のブロックを切り出して固めることで、キャップや胴軸の形状にしていくことで、一本の製品が出来上がります。そのためこのボディの柄や光り方は、どれひとつとして同じ表情を見せることはないのです」
手作り以外では作り出せない味わい深さが、アウロラの魅力を形作っています。ペンをポケットに入れる際などに使う『ジュエリークリップ』も、プランドらしさを特徴付けるパーツの一つ。
「オプティマや88(オタントット)、そして一部の限定品には、金属板を細かく叩いて作り出されるこだわりのジュエリークリップが装着されています。
こちらは金属の一枚板を、美しいアーチを描くように加工していくんです」
樹脂の削り出しやジュエリークリップの加工も、もちろん職人による手作業。大量生産することよりも、クオリティを保つことにこだわり続けています。
最新の技術も用いて「筆記具としての使いやすさ」もアップデート
万年筆といえば、インクを自分で継ぎ足して使うもの。
しかし、イタリアの高級メーカーとして世界のビジネスマンからも愛されてきたアウロラは、ある技術を用いて「筆記具としての魅力」もアップしているのです。
「アウロラの万年筆には、デザインだけでなく技術的にも最新の技術が用いられています。たとえば、インクボトルからインクを吸入するタイプのモデルには、アウロラ独自の『リザーブタンク』が装着されてます。
筆記中にインクが切れても、尻軸を止まるところまで緩めると、予備タンクからインクが供給される仕組み。A4用紙に1〜2枚分は持ちますよ」
リザーブタンクがあることで、外出中にインクが切れてしまっても、その日はどうにか乗り越えることができます。
いざという時にも頼れる「心遣い」が、アウロラがキャリアを持つ男性たちにも愛され続けている所以でもあります。
「自分らしい一本」が見つかる幅広いコレクションライン
アウロラは、定番モデルから限定品まで豊富なコレクションを展開しています。今回は後藤さんに売れ筋商品や人気のコレクションも聞いてみました。
オプティマは、1930年代のベストセラーの復刻版で、ボディにアウロロイドをふんだんに使っている逸品。
「キャップリングには古代ローマ時代のグレカ・パターンをあしらっており、オーセンティックさと個性のあるデザイン性を兼ね備えています。
リザーブタンクは『ピストン吸入方式』が採用されているので、急なインク切れにも対応可能。タンクの掃除が簡単なので、インク色も変えやすいです。
こだわりのペン先には、14金が使用されています。金の板を何回も折り曲げることにより、材料に強度と柔軟性を与えています」
ボディ、ジュエリークリップ、タンク、ペン先……すべてに「アウロラの魅力」を詰め込んでいます。
イプシロンはアウロラの筆記具の中でも手に取りやすい価格帯が魅力ですが、だからといって使い勝手には妥協がありません。
「イプシロンの特徴は、ボディ全体をまるい曲線美で表現したイタリアンデザインと、書きやすさを併せ持ったシリーズであることです。ステンレスのペン先を使った万年筆タイプに加え、日常使いしやすいボールペンタイプも展開しています」
カラーバリエーションが幅広いだけでなく、イタリアらしいはっきりとしたカラーリングも特徴。自分らしい色を探したくなりますね。
育てる万年筆、広がる趣味の世界
アウロラの多彩なコレクションの中から自分らしい一本を探し出すことも楽しいですが、後藤さんは、万年筆の魅力は「買った後」にこそ醸成されていくのだと断言します。
自分らしく育てる楽しさも
アウロラの万年筆も、コレクションによって様々なペン先が使われていますが、その書き味は「好み」による部分も大きいです。
「万年筆の魅力は、高価さだけで決まるわけではございません。
たとえば、イプシロンシリーズの万年筆のペン先はステンレス製ですが、他シリーズより少し書き心地が硬く、シャープに文字を書くことができます。
逆に、オプティマのゴールドのペン先は柔らかく、筆圧をかけても馴染みます。
その人の使い方次第でペン先の形状も少しずつ変化していくので、他人の万年筆ではうまく文字が書けないという人もいるほどです」
長く使った万年筆には、その人の書き様、生き様が出るのだといいます。まさに、一緒に育ち歩んでいく魅力があるのです。
実用的な需要だけでなく「趣味的需要」も増加
さらに近年では「手書き文字の良さ」に再注目が集まっており、アウロラのようにこだわりが詰まった筆記用具や、メーカーごとに風合いが変わるカラーインクを収集する人が増えています。
「文房具を取り扱うイベントも数が増えてきていて、アウロラもここ数年でインクがよく売れるようになりました。
インクのカラーにもそれぞれ想いが込められているので、その世界観も感じ取ってもらえたら嬉しいです」
インクは万年筆に使うだけではなく、羽根ペンやガラスペンをはじめとするつけペンにも使用できます。
ビンもかっこいいので、デスクに置くだけでも様になりそうです。
「生涯を共に過ごすパートナー」だからこそ、
アフターサービスも充実
アウロラの丁寧なものづくりのおかげで、堅牢性にも長けている万年筆たちは、最後には「次の世代へ」と継承できるほど、私たちと長い時間を一緒に過ごせるもの。
「お客様と私たちの関係も“商品を渡して終わり”ではありません。細かなものづくりを実践しているからこそ、アウロラの製品はパーツごとの修理や取り替えが可能です。保証書に基づいて修理のカルテもお作りしますので、たとえ他の方に万年筆を譲られたとしても、保証書ごとお譲りいただければ、いつでも責任を持ってオフィシャルのパーツでの交換を承っております」
修理は高級ナビオンラインストアの問い合わせフォームから申請が可能です。
アウロラには長い歴史がありますが、その万年筆の一本一本にも、これから歴史が刻まれていきます。
「ですが、アウロラのペンをご使用になるために特別の注意は必要ありません。よくお使いいただくことが、最良のお手入れ方法です」
こだわりのペンで、自身の生き様を文字として残してみませんか?