箸蔵まつかんが届ける一期一会の芸術品|400年の伝統を紡ぐ若狭塗箸【Interview】

日本国内の塗り箸の生産シェア・70%以上を誇る福井県小浜市の塗り箸メーカー『箸蔵まつかん』。1922年創業の老舗箸屋は、小浜市の伝統工芸『若狭塗』の技法を受け継ぐ箸を作り続けています。高級な漆を幾重にも塗り重ね、日本と福井の情緒を箸の中に表現した若狭塗箸は、今や絶滅の危機にある“日本の宝”のひとつです。箸蔵まつかんの、若狭塗の400年の伝統を守ってきた誇りと、日本の食文化を下支えしてきたお箸への熱い想いとは。

若狭湾の美しい海底を表現した
『若狭塗』

若狭塗の起源は、江戸時代に若狭湾の美しい海底の様子を図案化したことだと言われています。塗りの工程で松葉や貝殻、卵の殻といった自然素材を用いること、そして箸に特化した技術であることが、若狭塗の大きな特徴です。

「その昔、海沿いの小浜市には数多くの漁師が住んでいましたが、海が荒れている日は漁に出ることができないため、塗り箸の仕事を始めたのだそうです。自然豊かな若狭湾を箸の中で表現した若狭塗の箸は、調度品や特産品としても流通していました」

浅瀬に波がたなびく様子や、山が反射する様子……海沿いの街ならではの感性を表現した箸は、まさに芸術品です。


日本情緒を表現するためにかけられる手間

若狭塗は漆を塗る回数が多く、1膳のお箸を作るのに、半年以上かかることもよくあります。

「鮮やかな赤や黄色、緑の漆を塗り重ねながら、貝殻などを埋め込んでいきます。たくさんの色を塗り重ねるのですが、漆は透明性が低いので、そのままでは最後は一色塗りのお箸になってしまいますよね。ですが若狭塗では、10回、15回と塗り重ねた漆を、最後は石で研ぎ削っていくんです」

デザインによっては、塗り重ねたうちの一色は、ほんの少ししか顔を出さないこともあります。それでも、箸というフォーマットの中で日本情緒を繊細に表現するため、塗っては乾かすという手間を惜しまずかけています。

塗りと研ぎの技術は、熟練の職人のみが扱える匠の技でもあり、だからこそ若狭塗は、品格ある伝統工芸品であり続けています。


作家物の芸術品は、一期一会

しかし近年は時代や生活スタイルの変化によって、箸の需要も箸職人の数も、減少し続けています。現在、若狭塗の技術を受け継ぐ職人は小浜市内にも、ほんのわずかに残るのみです。

「まつかんでは、国内ではもういつ手に取れなくなるか分からない“作家物”の若狭塗箸を取り扱っています。人気の『貝きりこ』などは、若狭塗師の古井正弘さんの作品。小浜市内に5名となった若狭塗の職人の中で唯一、箸だけを専門とする職人さんです。15歳から箸職人を目指してから、60年以上伝統的若狭塗箸をつくり続けてきました。しかし、そんな古井さんも、年齢もあり引退目前です」

貝きりこ、八千代といった作品は古井さんの作品であり、他の職人さんには作ることができないデザインです。

「もちろん後継を育てる工夫もしていますが、作家物の箸はまさに芸術品であり、あるいっときにしか手に入らないものです。古井さんの作品の中には、もう僕たちの手元にある在庫が尽きてしまえば、二度とこの世で目にすることができない箸もあります。」


 

大切な誰かに送りたくなる、アートなお箸3選

お箸は2本揃って1膳となることから、支えあう夫婦に例えられることがあります。そのため、結婚祝いや家族への贈り物としても選ばれています。毎日使うものですから、もちろん自分や、パートナーへのギフトとしてもぴったり。400年の伝統を受け継ぐ職人が、一つ一つ丁寧に仕上げた若狭塗箸の中から、人気の逸品をご紹介します。


正八箸 黒檀・サティーネ 八角 ペア

高級ナビで人気の「正八箸 黒檀・サティーネ 八角 ペア」は、塗り箸ではないのですが、最高級の木材を使用した、デザイン性と実用性を兼ね備える箸です。

木地の仕上げから摺り・漆での仕上げまで、一人の職人が一貫してつくり上げています。正八箸は特に木地成形に時間をかけ、頭部から箸先まで限りなく美しい正八角形が特徴です。面が多いため食べ物をつまみやすく、ご高齢の方への贈り物としても人気です。

箸の頭部から箸先までストレートに削り出されており、太さはありながらもシャープなシルエットもポイント。仏壇などにも使用されることが多い黒檀とサティーネは非常に堅牢な木材で、握りやすさに加え、優れた耐久性を誇ります。1膳1膳、木材の表情が違うところも趣深く、箸蔵まつかんの担当も日常使いしている、隠れた名品です。

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桐箱夫婦八千代

伝統工芸士である古井さんの作品の一つである『八千代』は、鮮やかな赤と黒の漆塗りが対照的な若狭塗箸です。表面上は1色塗りに見えますが、実は下に黄色、梨子地、緑色といった漆が塗り重ねられています。

持ち手部に施された二つのラインデザインが特徴で、埋め込まれた貝や殻の模様が、若狭の浜辺と町の歴史を物語っています。長い歴史をかけて2人の関係が磨かれていくことを願って作られた、結婚祝いにぴったりのギフトです。

古井さんが引退目前の今、現在、まつかん本社にわずか200膳ほどしか在庫がないという、まさに幻の塗り箸です。

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桐箱入 貝きりこ

古井さんの代表作でもある『貝きりこ』は、幾重にも塗り重ねられた漆の合間から覗く、若狭湾の海底を思わせる貝の煌めきが印象的な作品です。あわびの貝殻で作られた幾何学的なデザイン性には、コアなファンもついており、指名買いされることも多い逸品です。こちらも在庫は残りわずかで、数十年後には二度と、手に入らなくなってしまうでしょう。

毎日の食事が楽しみになる箸は、自分へのプレゼントにもおすすめ。贈答用の場合には、夫婦箸のセットも取り扱いがあります。

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高級箸のお手入れ方法

職人が丁寧に仕上げるまつかんのお箸は、毎日使ってもお手入れ次第で10年以上使うことができます。高級木材を使用しているため、食洗機の使用は避けるよう推奨されています。

「お箸にとって一番良くないのは、使い終わった後、シンクで水に触れたままでい続けること。使ったらすぐ洗って乾かす、を徹底するだけでも長く愛用できます。漆の塗り箸でも、普通の食器用洗剤とスポンジでの洗いでOKです」

古井さんを始めとする職人たちの作品でもあるお箸は、今後修理が難しくなる可能性もあります。まつかんのお箸の中にも「食洗機OK」のお箸はありますが、食後に手洗いする習慣は、お箸や食事への感謝の気持ちを表すうえでも、おすすめです。


400年の伝統を、次世代につなぐ

まつかんの扱う若狭塗の箸は、百貨店などで取り扱われることも多く、今もセレブや日本の文化人たちから愛されています。小浜が支えてきた伝統文化を受け継ぐべく、まつかんは様々な箸を企画・製造しています。

「400年以上も続いた日本の伝統文化を、私たちの代で途絶えさせるわけにはいきません。だからこそまつかんでは、小浜を代表する若狭塗に限らず、色々な材料、デザインの箸を企画しています。

塗り箸はやはりその高級感が魅力ですが、黒檀・サティーネペアを始めとする木材が特徴的なお箸も、実用性があって愛されています。箸は毎日使うものですから、自分なりのストーリーがあるものを選ぶことができると、毎日のお食事が今よりもっと楽しく、うれしくなると思います」

まつかんは一貫して、福井、そして日本の豊かな自然をデザインとして表現し、毎日の食卓を彩る箸を作り続けてきました。世界の中でも「美味しい」と言われる日本食を長年支えてきたのも、国内シェア率の高いまつかんのお箸でもあります。

あなたも「まつかん」のお箸で、毎日の食事をもっと丁寧に、心豊かに楽しんでみませんか?

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